セマンティックWeb・AI時代のWebのカタチ
セマンティックWeb・AI時代のWebのカタチ
セマンティックWebという言葉は、多くの方にはそこまで馴染みの無い言葉かもしれません。言葉の感じから、従来のWebを発展させたものである事を連想するかもしれないですが、言葉だけでは具体的にどう従来のWebと違うかはわかりません。セマンティックWebは従来のWebをオントロジーで拡張させたものなので、AI時代のWebのカタチという事ができるかと思います。
セマンティックWebは、Webが普及し始めた当初から思想としては存在していましたが、時代に取り残される形で忘れ去られていましたが、AIの普及に合わせて再び注目を集めております。本記事では従来のWebとの違いを解説しつつ、セマンティックWebがどのようなものであるか、それが実現すると世界はどう変わるかについて解説を行います。
従来のWeb
セマンティックWebの解説を行う前に、そもそも従来のWebがどのようなものかについて、簡単に説明しておきます。Webは日常生活に密接しており、皆様もPCやスマートフォン等で、Webページを閲覧する事は良く行っていると思います。Webは正式名称をWorld Wide Web(WWW)と言い、Webページ同士の文章の繋がりが蜘蛛の巣に似ている事から、世界中に張り巡らされた蜘蛛の巣という意味合いで名づけられました。
Webページの記述には、HTMLやXHTMLといったハイパーテキストの記述言語が用いられます。ハイパーテキストとは、文書中に別のWebページのURLを埋め込むこむ(ハイパーリンク)事でインターネット上に散在する文書同士を相互に参照可能するものです。従来のWebでは、検索エンジンを用いて全文検索によりWebページの検索を行いますが、ユーザの意図まで把握する事は難しいという欠点があります。
セマンティックWeb
それでは次に、セマンティックWebの従来のWebとの違いについて解説を進めていきます。セマンティックWebの導入により、従来のWebで実現できない世界がどのように実現されるかについて説明します。まず、セマンティックWebは、従来のWebをオントロジーで拡張したもので、リンクトデータ構造で、概念と概念をプロパティを介して繋ぎ、ハイパーリンクで文章と文章を繋ぐだけの従来のWebよりも、遥かに大きな情報を扱えるようになります。
上の図は、オバマ元大統領に関する情報をセマンティックWebとして表現したものです。左側が従来のWeb(オバマ大統領に関するWebページ群)、右側がそれを拡張したセマンティックWebで扱える情報となります。
従来のWebが文章をハイパーリンクで繋いだだけのものに対して、セマンティックWebでは、オバマ元大統領の、「出生地」「家族」等の属性情報毎に情報が体系化され、リンクトデータとして表現されています。また、こういった各属性情報がプロパティとなり、概念と概念を結びます。
このように、セマンティックWebでは、人や物等、様々な事象が、リンクトデータ形式で繋がり、従来のWebよりも遥かに表現豊かなWebの世界を実現します。セマンティックWebこそAI時代の次世代Webと呼ぶのに相応しいでしょう。セマンティックWebにより、ユーザは、より意図に合致した情報を得る事ができ、従来のWebの限界を超えられます。
セマンティックWebのレイヤーケーキ
セマンティックWebを実現するためには、様々な技術要素を組み合わせる必要があります。下の図は、セマンティックWebのレイヤーケーキと呼ばれる図で、セマンティックWebを実現するために必要な技術要素をまとめたものとなります。
レイヤーケーキは、セマンティックWebを実現させるために必要な構成要素を以下のように定義しています。
- オントロジーのリソース(概念)を表現するための土台:URI/IRI
- リンクトデータの記述言語としての土台:XML
- セマンティックWeb上でオントロジーを記述するための記述言語の土台:RDF
- オントロジーの推論を行うために用いられる構成要素:RDFS、OWL、RIF
- リンクトデータに問い合わせを行うために用いられる構成要素:SPARQL
- セマンティックWeb上のデータを安全に管理するための基盤としての暗号技術:Crypto
- セマンティックWeb上で証明を行うための構成要素(現在は未実現):Unifying logic、Proof、Trust
レイヤーケーキの技術要素はW3Cという組織により定められており、定期的にその構成要素について見直しが行われ、最新のものにアップデートされていきます。
まとめ
セマンティックWebに関して、それが従来のWebとはどう違い、何が可能になるのかを、オントロジー、リンクトデータという言葉を交えて簡単に説明させて頂きました。リンクトデータ形式で、概念が繋がりより高度な情報を扱えるようになる事はご理解頂けたかと思います。
次回以降は、レイヤーケーキの詳細に踏み込んでその中で使用されている各技術についての詳細を解説させて頂きます。